フレンチブルドッグには、らくらくハーネスを使おう
フレンチブルドッグやパグ、そしてペキニーズといった短頭種は、鼻先が短く、首も短いため呼吸器のトラブルを抱えることが多いことご存知ですか?!
こんな呼吸をしていたら危険!?
- 「ガーガー」と呼吸をする
- 「ガハッ!」と咳き込む
- 何かと口を開けて、「ハァハァ」と荒い呼吸をする
- 寝ている時にいびきをかく
- 寝ている時に呼吸がとまる
運動することが大好きな犬にとって、呼吸がしづらいということはとても辛いことです。
なかには体の構造上、生まれつき気道が狭く苦しい思いをしている犬がいて、ひどい場合、ストローを使って呼吸をしている状態にちかい個体もいます。
もし仮に、自分自身が1日中、ストローを使った呼吸しかできない・・・、運動時にストローをつかった呼吸しか許されないとしたら・・・。想像するだけで、とても苦しい気持ちになってきます。
では、呼吸のしづらい状態は、どのような体の構造が原因なのでしょう。
呼吸がしづらくなる体の構造
- 軟口蓋過長症:軟口蓋(口と鼻を隔てる部位の一部)が上気道を ふさいでしまっている状態。(図1)
- 気管低形成:気管(空気の通り道)が細い状態。
- 外鼻孔狭窄:鼻の穴が小さいことで、空気が取り込みにくい状態。(図2)
どの状態も先天的な問題のため、軟口蓋を短く切る、そして鼻の穴が小さい犬の場合には、鼻の穴を広げるといった外科的な対処をして、症状を改善するしかありません。
そのため、普段から犬の呼吸に耳を傾け、危険な呼吸を耳にしたら動物病院で診察を受けることを心がけてください。
また、高齢になった小型犬や肥満状態の犬にも呼吸器トラブルの症状がみられることがありますので、注意が必要です。
『気管虚脱とは?』
気管を覆う軟骨が何らかの原因で歪んでしまい、呼吸が苦しくなる病気です。
原因は定かではありませんが、遺伝や肥満、そして物理的に気管が圧迫されることも、その要因として考えられています。
遺伝的な要因が関わっているとすれば、症状に併せた獣医学的な対処が必要となりますが、日頃からの管理が原因の場合には、飼い主の犬に対する世話の仕方を見直す必要があります。
人が関わる、犬の呼吸を苦しめる要因!?
- 肥満:脂肪が喉を圧迫することで、呼吸がしづらい状況を作り出している。
- しつけ:吠える頻度が多いことで、喉に負担がかかっている。
- 散歩の道具:散歩中の犬の引っ張りによって、喉が圧迫されている。
犬の食事の取り方は、体重に見合った量を与えたとしても、それ以上に食べようとする傾向があります。
犬は元々狩りをして生活をしていた動物です。ですから、いつ獲物にありつけるか分からないため、出されたものはガツガツと一気に食べ、お腹に溜め込もうとする習慣が残っていると言われています。そのため、よく食べる犬に必要以上にご飯やおやつを与えてしまい、脂肪がつき過ぎた肥満な体となり、物理的に喉を圧迫し呼吸がしにくくなるのです。
また、しつけができておらず、吠える頻度が多い犬では、喉に負担がかかり炎症などを引き起こすことがあります。これが結果的に気管に負担をかけ、犬の呼吸を妨げることにつながります。(「吠える」といっても、その理由は様々なため、吠える原因を特定してから世話の仕方を変えたり、飼育環境を整えること、しつけをすることが必要になります。)
肥満改善やしつけの仕方は、それぞれの犬によって大きく異なり、改善するには時間がかかります。そこで、今すぐ簡単に始められることは、散歩の道具を変えてあげることです。
犬の喉を圧迫しない道具の特徴は!?
- 体の肋骨部分を覆うハーネスタイプ
- 犬の体にかかる負荷を最小限にするもの
- 物理的に圧迫される力を軽減するもの
犬の胴体は肋骨で覆われていますが、首は骨に覆われていません。
空気が通る気管自体が軟骨に覆われているのです。
そのため、首輪などで強く圧迫されて続けた結果、軟骨がペタンとなり、この状態で呼吸を続けてしまうとさらに気管が潰れた状態になってしまいます。
そこで、まず始めに人が犬にできる配慮が、犬の首に負担をかけない道具をつかうこと。
つまり、肋骨で覆われた犬の胴体で動きを抑えるハーネスを使用することです。
それによって、首に負担がかからなくなり、気管を圧迫することが格段に少なくなります。
ただ、道具をハーネスに変えると、首には負担が掛からなくなりますが、今度は胴体部分に負担がかかることになります。いくら胴体部分が骨で覆われているからといっても、犬が前に引っ張り続けたり、瞬間的に走った際に体が受ける衝撃は計り知れません。
そこで犬が前に引っ張る、もしくは飛び出た瞬間の力を軽減するために、前に向かっているエネルギーを分散する必要がでてきます。
下の図のように、犬が前に進もうとする力(青の矢印)は、2つ(オレンジと黄色の矢印)に分散できるため、オレンジの矢印方向に力を加えることで、分散された黄色矢印の力に分かれることになります。
つまり、犬の胸の前にリードを付けてオレンジの矢印方向にリードを引くことで、犬が前に進む力が分散し、らくに犬の動きを止めることができるのです(黄色の分散した力は、犬のお尻が横に振られる遠心力に変わります)。
このような構造になっているのが”らくらくハーネス”で、犬の体にかかる衝撃を最小限に抑えることができるのです。
『らくらくハーネスと首輪の位置の違い』
らくらくハーネスは、胴体にフィットするように設計されているため、首輪よりの下の位置に装着となります。
つまり、限りなく首を圧迫しないように考案されたハーネスなのです!!
短頭種に限らず、生まれもって呼吸がしにくい体型の犬、そして、首輪やハーネスを使った散歩で苦しそうにしていたり、強く引っ張る犬には、らくらくハーネスがお勧めです。
例としてフレンチブルドッグの横からの写真をみてもらうとわかる様に、首輪の装着位置よりも、らくらくハーネスの装着位置の方が、胴体にしっかりとフィットしていることが分かると思います。つまり、できるだけ首を圧迫しないようになっています。
そして、リードを装着する箇所は、胸骨の先端部分に来る様に設計されていますから、もし今、首輪や背中にリードを装着するハーネスをお使いだとしたら、格段に引っ張る力を軽減させ、人も犬もらくに歩けるようになるでしょう。
著者:長谷川 成志(はせがわ まさし)
学術博士。 ドッグトレーナー(CPDT-KA)。 麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、学位を取得. 公益社団法人 日本愛玩動物飼養協会 スクーリング 講師(行動学)。主な著書、「動物看護の教科書」第4巻 行動管理・伴侶動物学 など。
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